すい臓がん
すい臓がんとは?
すい臓は消化酵素を含んだすい液の分泌(外分泌)と、血糖値をコントロールするホルモンの分泌(内分泌)の役割を担っています。しかし、胃や十二指腸、大腸、肝臓などに囲まれ、それらに包まれる様に存在する故に、解剖学的意味でも発見されにくいがんです。
発症すると極めて早く進行します。自覚症状としては食欲減退やみぞおち周辺や背中、腰の痛みなどがあります。これらの症状が現れたときには残念ながら、発見された段階で既に多臓器へ浸潤、転移している場合が多く、大抵の場合は手術が難しい状況です。
手術を行った場合でも、術後の1年生存率は完全に切除したときで50.7%と低く、極めて治癒率の低いがんです。
種類
すい液が通過するすい管から発生する「すい管がん」が90%と最も多くその中で、すい頭部がん・すい体部がん・すい尾部がんに分けられます。その中でもすい頭部がんが最も多いと言われています。 また、比較的稀ではありますが、すい液を生成する腺房から発生する「腺房細胞がん」や、内分泌線から発生する「すい内分泌腫瘍」があります。
症状
早期発見が極めて難しく、特徴的な初期症状もありません。時に、胃を意識する心窩部や背中の重苦しさや痛み、そして食欲減退などを訴えることがあります。進行が進むと、以上の症状の他、腹部の腫れ、下痢や便秘の繰り返し、黄疸や体のかゆみ、あるいは糖尿病を引き起こすこともあります。
原因
発症リスク要因として、糖尿病、膵炎、喫煙などが挙げられます。
生存率
術後の1年生存率は病巣を完全に切除した場合で50.1%、また、手術が行われなかった場合の5年生存率はほぼ0%です。
再発・転移
再発は特に肝臓へ転移しやすい傾向があります。極めて進行が早く、発見された時はすでに転移、もしくは隣接他臓器、主要血管へ浸潤している場合が約80%と言われています。
治療
手術は、すい臓の一部摘出もしくは全摘出、そして胃、十二指腸、胆管の一部と周囲の関連リンパ節を合わせて切除します。ただ、すい臓がんは発見されて手術が選択される場合が他のがんと比較して極めて低い(膵臓がん診断時で20%以下)上、今までの統計では手術が成功しても5年後の生存率が20%にも満たないと言われています。更には手術以外の治療法においてもその選択肢が少なく、抗がん剤としてジェムザールとTS-1, そして分子標的薬のタルセバの計3種類のみが日本における保険承認薬として認められていたのですが、最近になって海外では既に主役になりつつある“FOLFORINOX”という抗がん剤メニューが登場しています。しかし、これについては日本では副作用の観点から厳しく評価されがちであり、抗がん剤治療を行っている医療機関では未だ、積極的には用いられていない模様です。従って、膵臓がん患者さまの多くが膵臓がんと診断されてから標準治療以外の療法を早々と自ら探し、積極的に受けられる傾向が強く、実際、当院を含む免疫療法を行うクリニックにおいても免疫治療を受けられる患者さまの中でも、膵臓がん患者数が常にトップを占めています。
当院におきましては、標準的療法である抗がん剤(ジェムザール、TS-1、タルセバ)治療、放射線治療との組み合わせを重視し、WT-1ペプチベータなどを用いた独自の樹状細胞ワクチン療法、そして厳しい管理下で培養される高活性、且つ豊富な細胞数を誇る活性化Tリンパ球療法を状況に応じて駆使しながら積極的に治療に当たっています。